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従業員―組織の関係性とウェルビーイング  これから出る本

「健康組織」形成の視点から

従業員―組織の関係性とウェルビーイング

日本の職場のあり方を再考するための希少な一冊

著者 松田 与理子
ジャンル 心理(学)
出版年月日 2018/12/10
ISBN 9784771031074
判型・ページ数 A5・162ページ
定価 本体4,200円+税
在庫 未刊・予約受付中
 

目次

第1章 従業員―組織の関係性
 第1節 従業員と組織の交換関係
 第2節 組織サポート
 第3節 組織シニシズム
 第4節 日本における従業員と組織の関係性
 第5節 本研究の視座―1

第2章 従業員のウェルビーイングと健康組織
 第1節 組織内自尊感情
 第2節 ワーク・エンゲイジメント
 第3節 従業員ウェルビーイング介入研究の動向
 第4節 健康組織
 第5節 本研究の視座―2

第3章 本書の目的と概要
 第1節 本書における「従業員ウェルビーイング」の定義
 第2節 本書の仮説モデル
 第3節 本書の目的と意義
 第4節 本書の構成

  第Ⅰ部 日本語版組織内自尊感情尺度の開発

第4章 組織内自尊感情の研究動向
 第1節 測定尺度に関する研究
 第2節 規定要因に関する研究
 第3節 結果要因に関する研究

第5章 日本語版組織内自尊感情尺度の信頼性・因子的妥当性の検討(研究1)
 第1節 本章の目的
 第2節 方 法
 第3節 結 果
 第4節 考 察

第6章 日本語版組織内自尊感情尺度の構成概念妥当性の検討(研究2)
 第1節 本章の目的
 第2節 方 法
 第3節 結 果
 第4節 考 察

第Ⅱ部 日本版組織シニシズム尺度の開発

第7章 組織シニシズムの研究動向
 第1節 測定尺度に関する研究
 第2節 規定要因に関する研究
 第3節 結果要因に関する研究
 第4節 緩衝効果に関する研究

第8章 日本版組織シニシズム尺度の信頼性・因子的妥当性の検討(研究3)
 第1節 本章の目的
 第2節 方 法
 第3節 結 果
 第4節 考 察

第9章 日本版組織シニシズム尺度の構成概念妥当性の検討(研究4)
 第1節 本章の目的
 第2節 方 法
 第3節 結 果
 第4節 考 察

  第Ⅲ部 従業員ウェルビーイングの実証研究

第10章 従業員ウェルビーイングモデルの検証(研究5)
 第1節 本章の目的
 第2節 方 法
 第3節 結 果
 第4節 考 察

第11章 リーダーが認識する組織エージェントの役割

 第Ⅳ部 「健康組織」を視野に入れた介入案作成の試み

第12章 組織コミュニケーションと組織サポートとの関連性の検討(研究6)
 第1節 本章の目的
 第2節 方 法
 第3節 結 果
 第4節 考 察

第13章 組織サポートを強化する介入案の作成
 第1節 従業員の参画を促進する「学習する組織」
 第2節 アクション・ラーニングを取り入れた介入案の提案
 第3節 「健康組織」形成における課題

終 章 従業員のウェルビーイング向上を目指して
 第1節 本書の結果の要約
 第2節 本書の総合考察

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内容説明

近年、「不機嫌な職場」と称される日本の職場では、うつ病等のメンタルヘルス不調が深刻な社会問題となっている。本書では、従業員―組織の関係性と従業員のウェルビーイングとの関連について、組織内自尊感情、組織シニシズムに着目し、そのメカニズムを実証的に明らかにする。さらに、従業員の健康や満足感が組織の業績や生産性に大きくかかわることから、「健康組織」を視野に入れた介入案の検討を試みる。日本の職場のあり方を再考するための希少な一冊。

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ためし読み

緒 言――石川利江(桜美林大学大学院 心理学研究科 教授)

 人は日々仕事に多くの時間を費やし、生活の糧を得ている。仕事は経済活動であるだけでなく、人とのかかわりをもつ社会参加であり社会貢献でもあり、さらには生きがいや充実感の源でもある。しかし、実際には多くの勤労者が充実感ではなく深刻なストレス状況にあることが報告されている。厚労省の報告でも仕事に関する不安やストレスを感じるとする勤労者の割合は6割を超え拡大する傾向にあるとされている。平成27年度からは、「労働者のメンタルヘルス不調の未然防止」、「労働者自身のストレスへの気づきを促す」、「ストレスの原因となる職場環境の改善」などを目的としたストレスチェック制度が開始され、勤労者のストレス対処は社会全体の課題と言える。
 健康心理学は心理的側面だけでなく身体的健康や社会的関係まで含めた健康を視野にいれた分野である。ストレス関連問題の未然の防止やストレス低減をはかることは当然必要であるが、それだけでは十分でなくより積極的に心身の健康を促進し、充実した人生を送ることができるよう支援することも健康心理学の果たすべき役割といえる。
 我が国に健康心理学会が設立され学術的研究が始まってまだ30年余りである。健子心理学の社会的認知度がまだそれほど高くはないが、多くの重要な研究知見が積み重ねられてきている。本書もそのすぐれた研究成果の一つである。著者はビジネス領域で長年の経験を積んだのち、一念発起して健康心理学の学びを開始した。長年の企業での経験は本研究の基礎となっているが、さらに緻密な研究を行い、完成度の高い論文となっている。
 本書は2010年に提出された学位論文をもとにまとめられたものである。我が国における実証的研究が少ない組織との関係性という観点から従業員のウェルビーイング規定メカニズムについて客観的にとらえた検討を行ったすぐれた学術書である。さらに健康組織といった概念を導入し、職場における勤労意欲(ワークエンゲージメント)や組織シニシズムという課題を丹念に検討した点でも興味深い研究となっている。このような過程の中で作成された2つの尺度である日本語版組織内自尊感情尺度と日本版組織シニシズム尺度は、組織におけるメンタルヘルス改善やウェルビーイングの向上を評価する指標として大いに役立つものといえる。
 心理学の研究はともすれば個人要因に終始した検討が行われがちであるが、本研究では組織側の要因の重要性を示しており、今後の組織におけるメンタルヘルス改善など職場環境の改善の指針にもなるだろう。さらに日本では学術的研究例がほとんどないアクション・ラーニングという手法を用いた組織サポート強化プログラム案を作成している。学習する組織というユニークで具体的なマネジメント介入案の提示は今後の活用を期待させるすぐれた学術書である。
 本書は心理学以外の分野のきわめて多くの関連研究を踏まえた研究成果であり、特に欧米の研究を詳細に検討したうえで課題設定を行っている。その意味でも本書はこの領域の研究者にとって非常に参考になる書籍となると考えられる。

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