目次
一 ヴァナキュラー・モダニズムとしての映画鑑賞
二 「発展史」という問題
三 本書の構成
第一章 上海の遊歩者――映画観客はいかにして登場したか
一 散漫な映画鑑賞
二 上海における遊歩――路上の近代体験
三 遊歩と庭園
四 遊歩と観劇の近代化
五 遊歩の拡大と盛り場の変容――茶園・遊楽場・映画館
六 知的な映画空間――ヘテロトピアの誕生
第二章 「理解する」娯楽――映画説明成立史考
一 「理解する」という鑑賞の美学
二 「格致」という名の科学の受容――映画前史として
「格致」の臨界――物理学から殭屍まで/科学パフォーマンスと「格致」の文体
三 教養/ 遊興空間の創出――楽しい知識としての幻灯・映画
格致書院と幻灯上映/映画という「格致」――映画鑑賞と説明
四 映画説明書の誕生――知的遊戯の「教科書」
第三章 闇のなかの知的なささやき――肉声による映画説明
一 映画を「聞く」ということ
二 「文明」の翻訳者
三 お節介な啓蒙者――新興中間層と映画鑑賞マナー
四 トーキー到来と映画説明の変容
五 「理解する」鑑賞美学と肉声による映画説明
第四章 「猥雑」の彼岸へ――「健全」なる娯楽の誕生
一 上海YMCAの映画上映実践
「魔都」の「猥雑」な映画上映?/新興エリートの文化サロン――上海YMCAの成立/
「有益で健全なる」娯楽――上海YMCAの幻灯・映画上映/映画産業の濫觴として
ニ ヘテロトピアの映画館――YMCAとその周辺
曽煥堂と上海大戯院・何挺然と北京大戯院/盧寿聯と滬江影戯院/程樹仁と孔雀電影公司
第五章 刺激の近代――『閻瑞生』の変奏
一 「刺激の近代」と長篇劇映画の誕生
二 『閻瑞生』の物語の成立――ジャーナリズム、演劇、映画
事件の経過と報道/黒幕小説/演劇における『閻瑞生』/映画『閻瑞生』の登場――リアリズムと扇情
三 視覚メディアの多様化と「事実」の演出
報道写真/幻灯とノンフィクション映画/視覚的刺激への耐性
四 ボディ・ジャンルと文化規律
第六章 映画館への通い方――映画鑑賞の成立
一 遊歩から映画鑑賞へ
二 陸澹安――忠実な遊歩者
陸澹安と『澹安日記』/早熟な遊歩者/映画鑑賞の目的化/定刻化する映画鑑賞
三 「進歩」的な映画鑑賞の実践――陸潔と郁達夫
陸潔の場合/郁達夫の場合
四 見えざる観客――女性と子ども
第七章 「肉感」と「健康美」のはざま――ポルノグラフィと「良き観客」
一 道徳規範としての鑑賞マナー
二 「肉感」イメージの氾濫――女体ヌード表象と取締
三 国産「肉感」映画の登場
四 「良き映画観客」と「良き国民」
五 アングラ化するポルノグラフィ市場
六 「健康美」と女体の科学
終章 映画観客史はどこへ向かうか?
内容説明
遅刻やおしゃべりはご法度。途中で席を立つのは芸術が分からぬ「田舎者」。
そんなモダンな映画鑑賞マナーが、1920年代の上海で定着した。
座って静かに映画を見る中国人観客はいつ、どうやって成立したのか。
知られざる上海の近現代文化史を紐解く。
《著者からのメッセージ》
本書のブック・デザインは、「説明書」と呼ばれた上海の映画館プログラムをモチーフに作っていただきました。「説明書」には、番組一覧や上映作品のあらすじ、スチルなどが掲載されており、刷り色は映画館の「ランク」によって異なりました。外国製トーキーの封切館の場合は青系か茶系、中国映画上映館や二番館以下の説明書は黒やグレーで印刷されることが多かったようです。読者の方に「説明書」をめくっていただくような感覚で本書を読んでいただきたいという著者の思いを、編集者さんとデザイナーさんの全面的なご協力の下、とても素敵なかたちで実現していただきました。実際に本書を手にとっていただき、装幀の面でも楽しんでいただけましたら幸いです。
【書評・ご紹介情報】
・図書新聞 3420号(2019.10.26)書評掲載
・『東方』464号(2019.10)Book にっぽんのほん 書籍紹介
・『映像学』104号(2020.7.25)書評掲載
・『現代中国』94号(2020.9.30)書評掲載
・神戸映画資料館 今月の1冊 WEBSPECIAL / BOOKREVIEW
http://kobe-eiga.net/webspecial/bookreview/2019/10/289/
・日刊ゲンダイ 2020.5.20 シネマの本棚 映画館の復活を夢見る男たちのドキュメンタリー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/273347
ほか、下野新聞・京都新聞・山梨日日新聞・日本海新聞・神戸新聞 でも紹介
関連書籍
関連記事
- 【書評掲載】『映画館のなかの近代』(『現代中国』) - 2020.09.30
- 【書評掲載】『映画館のなかの近代』(映像学) - 2020.07.21
- 【書評】『映画館のなかの近代』(図書新聞) - 2019.10.21