目次
「みんなの問題」としての認知症
ケア実践の中に問う
実践を批判的に理解する
社会学的批判の方法
本書の構成
第1章 理解と包摂をめざして─ケア・介護の対象としての認知症理解へ
はじめに
1 排除と包摂のくり返しとしての認知症の歴史
2 理解からの排除︑理解することでの排除
「何もわからない人」からの出発
「正しい知識」による理解と排除
3 介護場面ゆえの理解と包摂
疾患にもとづく「問題行動」の理解
介護経験への理解不足
閉じた二者関係と失われる他者性
4 「新しい認知症ケア」の展開
その人らしさによりそう
疾患としての積極的対処
本人が「思い」を語ること
おわりに―三方向での理解・包摂
第2章 医療は敵なのか味方なのか─ケア実践による医療批判を考える
はじめに
1 医療への期待と批判
2 先駆的実践の背景
3 精神科臨床からの医療批判
「不自由をかかえた人」としてとらえる
「倦まずたゆまずのかかわり」
4 居場所づくりの実践からの医療批判
医療の外側へ
医療の論理を用いて
5 医療批判から学ぶこと
おわりに―新しい医療の論理に向きあっていくために
第3章 どのような「思い」によりそうのか─映像資料に見る本人の「思い」
はじめに
1 認知症関連番組に見る「思い」をとらえる実践
2 本人の「思い」を認める範囲
「問題行動」の背景にある「思い」
本人の「思い」の表現にともなう「問題行動」の軽減
介護する側の都合をやぶる「思い」
3 認知症の深まりへの怖れによりそう
認知症の進行を避けようとする実践
深まりゆく人の「思い」に向きあう
おわりに―どのような「思い」によりそうか
第4章 その人すべてを包摂することはできるのか─あるデイサービスにおけるケア実践のジレンマ
はじめに
1 「仕事の場」をつくる
2 「新しい認知症ケア」時代のケア労働
ケア労働としてのコミュニケーション
施設と在宅とのあいだ
「軽度」認知症の発見と早めのかかわり
3 オアシスクラブでの認知症ケア
よりそうことと進行を意識した実践
「ある」ことの許される居場所づくり
「その場での効果」を超えたケア実践
衰えの中での「その人らしさ」
限定的なよりそい
おわりに―よりそうことのジレンマ
第5章 本人の「思い」の発見は何をもたらすのか─「思い」の聴きとり実践から
はじめに
1 本人の「思い」の登場
2 「思い」を伝える〈媒介〉
認知症の人の「自己」への接近
関係の中での「自己」
3 〈媒介〉としての聴きとり
4 関係にはたらきかける聴きとり
家族への「橋渡し」
現れにくい「思い」
5 「思い」の聴きとりは新しいのか?
家族外部における〈媒介〉
語れなくなるときに向けて
おわりに―本人の「思い」の出現は何を提起するのか
第6章 認知症の本人たちの声はどのような未来をひらくのか─リアリティの分断に抗することに向けて
はじめに
1 「認知症問題」の当事者とは誰か?
当事者としての家族から本人の「思い」へ
「語る本人」から当事者団体による声へ
2 聴かれないことに抗して
代弁者として
「認知症らしさ」のジレンマ
聴かれない問題
3 聴かれるようになった後の課題
本人たちの声
「早期診断早期絶望」に抗する
異なる様式の語り
おわりに―リアリティの分断をつなぐ
終章 希望をひらくことに向けて─「進行」をめぐる諸実践への注目
1 認知症をめぐる新しい諸実践
「進行」という課題
新しい諸実践
2 障害の社会モデルから見た地域での諸実践
障害学から認知症を考える
「する」ことの幅を広げる地域
根強い「認知症にならないこと」「進行しないこと」の価値
3 認知症の自己定義への挑戦
インペアメントへの再注目
認知症におけるインペアメントの書き換え
おわりに―社会学的研究の課題と希望
補論 認知症当事者本がひらくもの─二〇一七年の著作群を中心に
1 認知症当事者本の積み重なり
2 本人の「思い」からの出発
3 当事者本の登場とその主張
4 二〇一七年の著作群から受けとれること
「できること」の実証と意味転換
個を超える希望
あとがき
文献
索引
内容説明
2000年代に入り認知症への関心が高まりを見せる中で、
認知症の本人たちが声をあげ、様々な新しい試みがなされている。
認知症社会を生きるわれわれは、ここでいったん立ち止まり、
これまでなされてきた介護やケアなどの諸実践を振り返り、
未来の希望をひらくために今何を考えるべきかを問わなければならない。
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