目次
1 本章の目的
2 社会学の対象としての「青年」
3 青年へのアプローチ
4 社会学の対象としての「若者文化」
5 若者のコミュニケーション
6 局所化する若者論
7 おわりに
第1章 オタク文化は,現在でも都市のものなのか(大倉 韻)
1 「オタク」の変化
2 仮説の提示
3 GYS調査の分析
4 2014年全国調査の分析
5 意識・行動項目の地域差の検討
6 オタクの一般化・偏在化と,新たなオタクの登場
第2章 Gathering文化からSharing文化へ
――渋谷センター街のギャル・ギャル男トライブの変遷(荒井悠介)
1 はじめに
2 先行研究と研究手法
3 渋谷センター街におけるGathering文化
4 渋谷センター街のその後――GatheringからSharingへ
5 おわりに
第3章 それでもなお,都心に集まる若者たち
――東京都練馬区の若年層への質問紙調査の分析から(小川豊武)
1 はじめに
2 都市空間と消費文化に関する研究
3 分析データの概要と変数の説明
4 「都心志向」の若者たちの実態とその規程要因
5 おわりに
コラム1 空間としての地元,社会関係としての地元(知念 渉)
コラム2 若者と「地元」定義(寺地幹人)
第4章 「若者の地方移住」をめぐる語り
――若者・場所・アイデンティティ(牧野智和)
1 若者は地方を目指す?
2 地方移住への注目と若者
3 若者の農山漁村移住と「新たな縁」
4 「つながり」語りとしての「若者の地方移住」
コラム3 地域おこし協力隊×地方志向の若者×移動――定住と定住のハザマで(井戸 聡)
コラム4 地域間移動という死角――若者の社会移動を考える(妹尾麻美)
第5章 フジロックフェスティバルに「帰る」人びと
――「帰省」のレトリックと第三の故郷(永田夏来)
1 若者が上京することの焦燥感と希望
2 レジャー化する「夏フェス」
3 フジロックの「かけがえのなさ」と「場所」の語り
4 「帰省」のレトリックと第三の故郷
コラム5 「応援上映」という瞬間的共同体(大倉 韻)
第6章 現代のメディア空間と友だちとのつながり方
――匿名性から考える(福重 清)
1 座間9遺体事件とその報道が提起したもの
2 匿名的な人間関係をめぐる議論の変遷
3 今日のメディア空間と若者の人間関係の状況
4 同質性・共感性を想起させる情報と「信頼のレバレッジ」
コラム6 SNS利用の都市/地方比較(阪口祐介)
終 ポストアーバン化時代の若者論へ(轡田竜蔵)
1 若者文化論と都市論を切り離す
2 「若者が集まる街」はどこに消えたのか?
3 ウェブ社会化と大都市的コミュニケーションのゆくえ
4 国土の全面的な消費社会化と若者のライフスタイル
5 トランスローカリティの時代の若者文化の創造
6 コロナ禍以後の若者文化の「場所」を考える
7 おわりに――ポストアーバン化時代の若者論の課題
内容説明
都会と田舎,オンラインとオフライン,日常と非日常…
創造と越境を繰り返す若者文化の現在(いま)をとらえる
「現代の若者」にどう迫り,そこから何を読み取ることができるのだろうか。
従来の「都市の若者」から「若者」を語るという図式を超えて,多様な「場所」からその姿の析出を試みた,若者論の新潮流。
都市そのものの変容,インターネットやSNSの広まりというウェブ社会の発展とともに,若者文化もまた,変化している。さらに,新型コロナウイルス感染症の流行は,街から人影を消し,こうした変化を加速させた。急速にデジタル化・オンライン化が進むなかで,若者は,「リアルな場所」に何を求めているのか。
《執筆者一覧》(執筆順,*は編著者)
*木村絵里子(きむら えりこ)[序章]
日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程後期単位取得満期退学,博士(学術).現在,日本女子大学人間社会学部助教.「<外見>の発見と日本近代――『美人』の写真を『見る』ことの社会的様式に着目して」(時安邦治編『日本近代再考』白澤社,2019年),「メディア経験としての『東京百美人』――19世紀末の新聞記事からみるメディア・イベントの成立過程」(『マス・コミュニケーション研究』94号,2019年),「『情熱』から『関係性』を重視する恋愛へ――1992年、2002年、2012年調査の比較から」(藤村正之・浅野智彦・羽渕一代編『現代若者の幸福――不安感社会を生きる』恒星社厚生閣,2016年).
大倉 韻(おおくら ひびき)[1章,コラム5]
首都大学東京大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得退学.現在,東京医科歯科大学教養部非常勤講師. 「若者文化は25年間でどう変わったか――『遠隔=社会,対人性,個人性』三領域の視点からの『計量的モノグラフ』」(共著)(『紀要社会学・社会情報学』第27集,2017年),「現代日本における若年男性のセクシュアリティ形成について――『オタク』男性へのインタビュー調査から」(『社会学論考』第32集,2011年).
荒井悠介(あらい ゆうすけ)[2章]
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了,博士(社会学).現在,成蹊大学文学部調査・実習指導助手.明治大学,明星大学,国際基督教大学,立教大学大学院,BLEA大学部,兼任講師・非常勤講師. 「社会的成功のため勤勉さと悪徳を求める若者たち――渋谷センター街のギャル・ギャル男トライブ」(多田治編『社会学理論のプラクティス』くんぷる,2017年),「ユース・サブカルチャーズの卒業の変容――ギャル・ギャル男サークルからの引退を事例に」(『年報カルチュラル・スタディーズ』vol.1,2013年),『ギャルとギャル男の文化人類学』(新潮社,2009年).
小川豊武(おがわ とむ)[3章]
東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学.現在,昭和女子大学人間社会学部現代教養学科専任講師. 「Locality:若者の音楽聴取スタイルの地域差」(南田勝也・木島由晶・永井純一・小川博司編『音楽化社会の現在』新曜社,2019年),「『自立しない若者たち』という語り」(小谷敏編『二十一世紀の若者論』世界思想社,2017年),「『若者』はいかにしてニュースになるのか」(川崎賢一・浅野智彦編著『〈若者〉の溶解』勁草書房,2016年).
知念 渉(ちねん あゆむ)[コラム1]
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了,博士(人間科学).現在,神田外語大学外国語学部講師. 「〈ヤンチャな子ら〉の男性性を捉えるために――ポストハマータウン研究における男性性の位置」(『現代思想』4月号,2020年),『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー――ヤンキーの生活世界を描き出す』(青弓社,2018年),「〈インキャラ〉とは何か――男性性をめぐるダイナミクス」(『教育社会学研究』100集,2017年).
寺地幹人(てらち みきと)[コラム2]
東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学.現在,茨城大学人文社会科学部准教授. 「若者にとっての『地元』――青少年研究会2014年調査をもとに」(『茨城大学人文学部紀要―社会科学論集―』第63号,2017年),「経済的成功に対する若者の意識の変容――個人的な要因の衰退と非個人的な要因の台頭」(藤村正之・浅野智彦・羽渕一代編『現代若者の幸福――不安感社会を生きる』(恒星社厚生閣,2016年),「若年層の政治関心と趣味――『趣味活動』と『趣味嗜好』という観点から」(共著)(『ソシオロゴス』第37号,2013年).
*牧野智和(まきの ともかず)[4章]
早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学,博士(教育学).現在,大妻女子大学人間関係学部准教授. 「青年/若者をめぐる『まなざし』の変容――啓蒙・モラトリアム・コミュニケーション」(髙橋均編『想像力を拓く教育社会学』東洋館出版社,2019年),「教育社会学における『地方の若者』」(共著)(『教育社会学研究』102,2018年),『日常に侵入する自己啓発――生き方・手帳術・片づけ』(勁草書房,2015年).
井戸 聡(いど さとし)[コラム3]
京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了,博士(文学).現在,愛知県立大学日本文化学部准教授. 「『地方志向』の若者としての地域おこし協力隊――移動の枠組みと課題の諸特性についての一考察」(『愛知県立大学日本文化学部論集』第8号,2017年),「『原生林』の誕生――『自然』の社会的定義をめぐって」(田中滋編『都市の憧れ、山村の戸惑い――京都府美山町という「夢」』晃洋書房,2017年), 「河川開発と社会的儀礼――河川の近代化と『筏の終焉』」(上川通夫・愛知県立大学日本文化学部歴史文化学科編『国境の歴史文化』清文堂出版,2012年).
妹尾麻美(せのお あさみ)[コラム4]
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位修得退学,博士(人間科学).現在,同志社大学文化情報学部助教. 「就職活動過程における女子大学生のライフコース展望」(『年報教育の境界』第16号,2019年),「求人メディア利用の変化から『人=メディア』を考える」(岡本健・松井広志編『ポスト情報メディア論』ナカニシヤ出版,2018年).
永田夏来(ながた なつき)[5章]
早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了,博士(人間科学).現在,兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授. 『音楽が聴けなくなる日』(共著)(集英社〔集英社新書〕,2020年),『生涯未婚時代』(イースト・プレス〔イースト新書〕,2017年),『入門家族社会学』(共編著)(新泉社,2017年).
福重 清(ふくしげ きよし)[6章]
東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程満期単位取得退学.現在,立教大学社会学部,明治大学,大東文化大学,大妻女子大学,和洋女子大学,兼任講師・非常勤講師. 「複数のセルフヘルプ・グループをたどり歩くことの意味」(伊藤智樹編『ピア・サポートの社会学――ALS,認知症介護,依存症,自死遺児,犯罪被害者の物語を聴く』晃洋書房,2013年),「メディア・コミュニケーションにおける親密な関係の築き方――パソコン通信からインターネットの時代へ」(岩田考・羽渕一代・菊池裕生・苫米地伸編『若者たちのコミュニケーション・サバイバル――親密さのゆくえ』恒星社厚生閣,2006年),「若者の友人関係はどうなっているのか」(浅野智彦編『検証・若者の変貌――失われた10年の後に』勁草書房,2006年).
阪口祐介(さかぐち ゆうすけ)[コラム6]
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了,博士(人間科学).現在,桃山学院大学社会学部准教授. 『リスク社会を生きる若者たち――高校生の意識調査から』(共著)(大阪大学出版会,2015年),『終わらない被災の時間――原発事故が福島県中通りの親子に与える影響』(共著)(石風社,2015年),『民主主義の「危機」――国際比較調査からみる市民意識』(共著)(勁草書房,2014年).
*轡田竜蔵(くつわだ りゅうぞう)[終章]
東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程単位取得退学.現在,同志社大学社会学部准教授.「サイレント・マジョリティを思考すること」(川端浩平・安藤丈将編著『サイレント・マジョリティとは誰か――フィールドから学ぶ地域社会学』ナカニシヤ出版,2018年),『地方暮らしの幸福と若者』(勁草書房,2017年),「過剰包摂される地元志向の若者たち」(樋口明彦・上村泰裕・平塚眞樹編著『若者問題と教育・雇用・社会保障』法政大学出版局,2011年).
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