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24フレームの映画学

映像表現を解体する

24フレームの映画学

映像表現の醍醐味に光をあてなおす、まったく新しい映像論

著者 北村 匡平
ジャンル 社会 > 文化研究
社会 > メディア
芸術 > 映画
おすすめテキスト > 社会 > メディア
おすすめテキスト > 芸術・美学
出版年月日 2021/05/15
ISBN 9784771034518
判型・ページ数 4-6・286ページ
定価 2,750円
在庫 在庫あり
 

目次

序 説――映像表現論

第1章 映画とは何か
 1 映画の誕生――19世紀の視覚文化
 2 初期映画の表現史――アトラクションのシネマ
 3 映画技法の模索――スペクタクルから物語映画へ

第2章 映画の視線
 1 映画の文法とその解体――切り返しショット
 2 小津安二郎による視線のダイアローグ――『小早川家の秋』『麦秋』
 3 視覚の失効と〈逃走〉の物語――スタンリー・キューブリック『シャイニング』
 4 成瀬巳喜男の視線劇――『乱れる』のダイナミズム

第3章 映画の編集
 1 ヒッチコックの編集術を見極める――『汚名』『鳥』
 2 ホラー映画を比較する――『リング』『ザ・リング』
 3 シーンを構成する――スコセッシ、成瀬巳喜男、清水宏
 4 フレームを解体する――黒澤明『羅生門』
 5 ショットを操作する――黒沢清『CURE』

第4章 映画の音響
 1 黒澤明の対位法――『酔いどれ天使』『野良犬』
 2 北野武の音響設計――フレームによる(不)可視化
 3 〈音〉と映像の表現――マーティン・スコセッシ『ディパーテッド』
 4 〈声〉のメロドラマ――篠田正浩『心中天網島』

第5章 映画の境界
 1 境界で物語は生起する――宮崎駿、大林宣彦、溝口健二
 2 フェデリコ・フェリーニの〈断絶〉の線――『女の都』『道』『甘い生活』
 3 海辺の境界線――阪本順治、相米慎二、北野武
 4 〈分裂〉するスクリーン――川島雄三の映像空間

第6章 映画の形態
 1 接触と触覚――クリント・イーストウッド『ヒア アフター』
 2 切断と分裂――アルフレッド・ヒッチコック『サイコ』
 3 堕落と下降――任侠映画のカメラワーク

第7章 アニメーションの表現
 1 ディズニー・アニメーションの誕生――生命を吹き込む
 2 ジャパニーズ・アニメーションの勃興――手塚治虫『鉄腕アトム』
 3 スタジオジブリと宮崎駿――国民的アニメーション作家

第8章 アニメーションの現在
 1 虚/実を超えるアニメーション表現――今敏『千年女優』
 2 実景を再解釈するデジタル表現――新海誠『君の名は。』『言の葉の庭』
 3 アニメ/映画の越境――細田守『おおかみこどもの雨と雪』

第9章 文学の映画化――遠藤周作『沈黙』のアダプテーション
 1 映画の再創造――アダプテーション/リメイク
 2 遠藤周作が描く「弱者の物語」
 3 篠田正浩の「堕落/敗北の物語」――『沈黙 SILENCE』
 4 マーティン・スコセッシの「強者/弱者の物語」――『沈黙―サイレンス―』

第10章 アニメ・リメイク――『打ち上げ花火、横から見るか? 下から見るか?』
 1 観察者としての映像経験――メディアと身体
 2 テレビドラマ/アニメーションの比較分析――「岩井ワールド」のアニメ化
 3 ポストメディウム時代の受容――「リメイク的映像文化」の誕生

結 論――映像の快楽

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内容説明

News
『日本経済新聞』(2021.7.3)読書欄で書評掲載(評者:岡田秀則氏)



 
 映画を計測する


映画はもはや、映画館で「注視」することが主流の視聴モードではない。一回性は失われ、いつでも繰り返して観ることが可能になった。さらには「ながら見」や移動中など、「気散じ」的な視聴モードも一般化し、映画の時間・空間は、その構造の変化を余儀なくされている。いま、映画はどう論じうるだろうか。

映画の誕生からその文法までを丁寧に紐解き、さまざまな映像表現を真摯に見つめ、フレームの奥深い内部だけでなく、フレームの外部や裏側まで思考を重ねる。映像表現の醍醐味に光をあてなおす、まったく新しい映像論。


Point
◎雑誌『文學界』で、話題沸騰の新連載「椎名林檎論――乱調の音楽」の著者による最新刊
◎“記憶”ではない、“記録”と“高解像度”による試み
◎フレーム単位、さらにはフレーム内外までを精緻に考察した、新たな映画批評
◎巻末には、映画関連の用語集を付録



...現代のデジタル技術時代/アーカイヴ時代における映像批評は、「記録と高解像度の解析力」に基づく新たな批評実践を必要とするパラダイムだといえるだろう。表現を変えれば、それは映画の解剖学だ。ところが長らく映画研究/批評は、できるにもかかわらず映画を計測すること、徹底して細部を見定めることを怠ってきた。だからこそ、本書では分析の精度/解像度をかなりあげ、必要な箇所にはデジタル技術も使用して肉眼では視認しがたいフレーム単位の分析を施した。(中略)いま映像批評はテクノロジーを使ったミクロな分析を必要としているのである。(「序説」より)



《著者紹介》

北村匡平(きたむら きょうへい)

1982年山口県生まれ。映画研究者/批評家。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了、同大学博士課程単位取得満期退学。日本学術振興会特別研究員(DC1)を経て、現在、東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター・リベラルアーツ研究教育院准教授。専門は映像文化論、メディア論、表象文化論。『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社、2017年)にて第9回表象文化論学会・奨励賞受賞、『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩書房、2019年)にて令和2年度手島精一記念研究賞・著述賞受賞。共編著に『川島雄三は二度生まれる』(水声社、2018年)、『リメイク映画の創造力』(水声社、2017年)、翻訳書にポール・アンドラ『黒澤明の羅生門——フィルムに籠めた告白と鎮魂』(新潮社、2019年)。共著に『ポストメディア・セオリーズ——メディア研究の新展開』(ミネルヴァ書房、2021年)、『公開70周年記念 映画「羅生門」展』(国書刊行会、2020年)、『映画監督、北野武。』(フィルムアート社、2017年)などがある。『文學界』2021年3月号より「椎名林檎論——乱調の音楽」を連載。













/// 各章の本文から、ダイジェスト版画像公開中 ///
























動画版もご覧ください。





本書に登場する作品一覧(公開年順)

作品名 制作者
1895 『水をかけられた散水夫』 リュミエール兄弟
1900 『中国における伝道会の攻撃』 ジェームズ・ウィリアムソン
1901 『大飲み』 ジェームズ・ウィリアムソン
  『ある犯罪の物語』 フェルディナン・ゼッカ
  『ニューヨーク23番通りで何が起こったか』 エドウィン・S・ポーター
1902 『月世界旅行』 ジョルジュ・メリエス
1903 『アメリカ消防夫の生活』 エドウィン・S・ポーター
  『大列車強盗』 エドウィン・S・ポーター
1906 『イントラレンス』 D・W・グリフィス
1908 『ドリーの冒険』 D・W・グリフィス
1909 『淋しい別荘』 D・W・グリフィス
1915 『国民の創生』 D・W・グリフィス
1928 『蒸気船ウィリー』 ウォルト・ディズニー
1933 『瀧の白糸』 溝口健二
1935 『二人妻 妻よ薔薇のように』 成瀬巳喜男
1936 『有りがたうさん』 清水宏
1937 『花形選手』 清水宏
  『風の中の子供』 清水宏
1943 『くもとちゅうりっぷ』 政岡憲三
1945 『桃太郎 海の神兵』 瀬尾光世
1946 『汚名』 アルフレッド・ヒッチコック
1948 『醉いどれ天使』 黒澤明
1949 『野良犬』 黒澤明
1950 『めし』 成瀬巳喜男
  『羅生門』 黒澤明
1951 『麦秋』 小津安二郎
1952 『西鶴一代女』 溝口健二
1953 『雨月物語』 溝口健二
1954 『道』 フェデリコ・フェリーニ
  『昨日と明日の間』 川島雄三
  『真実一路』 川島雄三
1955 『あした来る人』 川島雄三
1956 『飢える魂』 川島雄三
  『風船』 川島雄三
1957 『カビリアの夜』 フェデリコ・フェリーニ
1959 『貸間あり』 川島雄三
1960 『勝手にしやがれ』 ジャン゠リュック・ゴダール
  『甘い生活』 フェデリコ・フェリーニ
  『人も歩けば』 川島雄三
  『接吻泥棒』 川島雄三
  『サイコ』 アルフレッド・ヒッチコック
1961 『小早川家の秋』 小津安二郎
  『用心棒』 黒澤明
  『女は二度生まれる』 川島雄三
1962 『椿三十郎』 黒澤明
  『しとやかな獣』 川島雄三
  『雁の寺』 川島雄三
  『箱根山』 川島雄三
1963 『鳥』 アルフレッド・ヒッチコック
1963〜66 『鉄腕アトム』 虫プロダクション
1964 『乱れる』 成瀬巳喜男
1965 『気狂いピエロ』 ジャン゠リュック・ゴダール
1967 『俺たちに明日はない』 アーサー・ペン
1968 『大幹部 無頼』 小澤啓一
1969 『心中天網島』 篠田正浩
1971 『沈黙 SILENCE』 篠田正浩
1973 『ミーン・ストリート』 マーティン・スコセッシ
1975 『仁義の墓場』 深作欣二
1976 『タクシー・ドライバー』 マーティン・スコセッシ
1977 『合衆国最後の日』 ロバート・アルドリッチ
1979 『ルパン三世 カリオストロの城』 宮崎駿
1980 『シャイニング』 スタンリー・キューブリック
1980 『女の都』 フェデリコ・フェリーニ
1982 『転校生』 大林宣彦
1983 『魚影の群れ』 相米慎二
1984 『風の谷のナウシカ』 宮崎駿
1986 『天空の城ラピュタ』 宮崎駿
1988 『となりのトトロ』 宮崎駿
1989 『その男、凶暴につき』 北野武
  『魔女の宅急便』 宮崎駿
1990 『3-4x10月』 北野武
1992 『紅の豚』 宮崎駿
1993 『ソナチネ』 北野武
  『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』 岩井俊二
1995 『トイ・ストーリー』 ピクサー
1997 『CURE』 黒沢清
  『もののけ姫』 宮崎駿
  『PERFECT BLUE』 今敏
1998 『リング』 中田秀夫
  『サイコ』 ガス・ヴァン・サント
1999 『デジモンアドベンチャー』 細田守
2000 『散歩する惑星』 ロイ・アンダーソン
  『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』 細田守
2001 『バニラ・スカイ』 キャメロン・クロウ
  『千と千尋の神隠し』 宮崎駿
  『BROTHER』 北野武
2002 『ザ・リング』 ゴア・ヴァービンスキー
  『千年女優』 今敏
  『ほしのこえ』 新海誠
2003 『座頭市』 北野武
2005 『ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』 細田守
2006 『ディパーテッド』 マーティン・スコセッシ
  『パプリカ』 今敏
  『時をかける少女』 細田守
2007 『秒速5センチメートル』 新海誠
2009 『ヱヴァンゲリオン新劇場版:破』 庵野秀明
  『サマーウォーズ』 細田守
2010 『アウトレイジ』 北野武
  『ヒア アフター』 クリント・イーストウッド
  『モテキ』 大根仁
2012 『アウトレイジ ビヨンド』 北野武
  『おおかみこどもの雨と雪』 細田守
2013 『舟を編む』 石井裕也
  『言の葉の庭』 新海誠
2014 『さよなら、人類』 ロイ・アンダーソン
2015 『バケモノの子』 細田守
  『バクマン。』 大根仁
2016 『君の名は。』 新海誠
  『沈黙―サイレンス―』 マーティン・スコセッシ
2017 『打ち上げ花火,下から見るか? 横から見るか?』 新房昭之
2018 『ミライの未来』 細田守
  『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』 デヴィッド・スレイド(NETFLIX)
2019 『半世界』 阪本順治
  『天気の子』 新海誠







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