目次
序 章 戦時期日本の働く女たちに関する研究のこれまでとこれから
1 戦時期日本の働く女たちに関する研究の到達点
2 女性労働者の労務動員が生じさせた摩擦
第一章 一九二〇年代から一九三〇年代の女性の就業状態
――労働運動の指導者と研究者の視点から見た働く女たち
1 一九二〇年代から一九三〇年代の女性労働者の就業状態
――稼得労働と妊娠、出産、育児との両立
2 稼得の必要性から働かざるを得ない未婚の女性労働者
――赤松常子の問題意識
3 労働環境が及ぼす健康への影響
――研究者たちの視点から見た女性労働者
第二章 未婚女性の労務動員のための「戦時女子労務管理研究」
――労働科学研究所の古沢嘉夫の視点から
1 戦争の開始と「戦時女子労務管理研究」の必要性
2 労働科学研究所の「戦時女子労務管理研究」
――古沢嘉夫が訴えた女性労働者の健康
3 女性労働者の出身階層と健康状態
――月経に関する調査研究
4 生き抜くために働く既婚女性と研究者の制約
第三章 既婚女性労働者の困難
――妊娠、出産、育児期の女性たち
1 既婚女性は労働力の対象ではなかったのか
2 救貧対策としての母子保護法の制定
3 貧困家庭の母親たちに向けられた政府の二重の期待
4 働く母親たちと保育環境
第四章 女性たちの労務動員に対する態度の多様性と政府の対応策
1 階層格差から生まれた女女格差
2 職場における男女格差
――男女同一労働同一賃金の議論のゆくえ
3 女性の労務動員の最終手段
――女子挺身隊から現員徴用へ
第五章 赤松常子の主張と産業報国会の取り組みとの齟齬
――既婚女性の労働環境をめぐって
1 使用者たちに抵抗する産業報国会女性指導者
2 女子挺身隊に対する未婚女性の母親たちの心配
――産業報国会に求められた未婚女性への「生活指導」
3 働かざるを得ない既婚女性を守ろうとした赤松常子
――言説に見られる制約
第六章 戦時体制が残した女性労働者の健康への視点
――生理休暇の現代的意義
1 戦時期がもたらした敗戦直後の女性労働への影響
2 生理休暇制定を主張した赤松常子
3 消えかけた生理休暇
4 生理休暇が本当に〈消える〉ために必要なこと
終 章 戦時期日本を生き抜いた働く女たち
あとがき
参考文献
内容説明
第20回 日本労働社会学会奨励賞 受賞
2023年度 第18回 女性史学賞 受賞
生理休暇が〈消える〉ためには?
「第49回赤松賞」を受賞した著者が、戦時期の女性労務動員についての歴史的・実証的研究から、現代にも通じる女性労働者の稼得労働と妊娠、出産、育児に関する課題を照射する。
「総力戦」が強調された戦時期における女性労務動員の展開は、グローバル経済下で競争力の維持を目指す現代日本の労働政策と相通ずる点があるのではないだろうか。赤松常子は敗戦直後に「日本女性の戦ひはこれからである」と残した。現代を生き抜くために今知っておきたい戦時期日本の働く女たちの姿がここにある。
【書籍紹介・書評掲載情報】
・hamachanブログ(2022年3月12日)濱口桂一郎先生による書籍紹介
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2022/03/post-5f9cdf.html
・『月刊民社』319号(2022年4月1日)書籍紹介
・エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)ブログ(2022年4月5日) 書籍紹介
https://l-library.hatenablog.com/entry/2022/04/05/224248
・『季刊 セクシャリティ』107号(2022年7月)図書紹介
・『月刊 We learn』(日本女性学習財団)2022年8月号(No.821)「ざ・ぶっく」書籍紹介
・『日本労働研究雑誌』no.748(2022.11)書評掲載
「資料の乏しい戦時期の女性労働について、労働科学研究所の研究や赤松常子ら労働運動家の言説を通して明らかにしようと試み、既婚女性の労働に注目した意義は大きい。」
・『図書新聞』3566号(2022年11月12日)書評掲載
「・・・女性の戦時労働を、主に労働問題研究所や赤松常子等の労働調査に関わるアクタ―とその言説、思想性からとらえ返す新たな試みである。・・・」
・『大原社会問題研究所雑誌』774号(2023年4月)書評掲載
「・・・本書は、今日の日本における女性労働問題への深い示唆を与えるとともに、力強い提言を投げかけるものである。・・・」
・『女性労働研究』第67号(2023年3月)書評掲載
「・・・女性の健康と労働に着眼していた労研の研究者たちの諸主張、そして戦前から戦後にかけて女性保護を訴えてきた赤松についての研究は、他に類をみない。・・・」
・WAN 女の本屋 著者・編集者からの紹介 https://wan.or.jp/article/show/10620
「・・・本書は、激動の時代である戦時期日本における女性労働者の多様性を把握するという視点をもっています。・・・」
・『民衆史研究』第105号(2023年5月)書評掲載
「・・・戦時期の女性労働と複雑な動員過程を改めて整理し、そこに影響を与えた労研と赤松常子を労働環境の待遇改善との視点から位置づけ直し、戦後まで射程を伸ばした点は本書の特徴である。・・・」
・『ジェンダー史学』第19号(2023年10月13日発行)書評掲載
「・・・本書は戦時期日本の女子労務動員の全体像を精緻に描き出し、長く日本社会に残り続け、グローバル社会のなかで国際競争力の維持を目指す現代日本の労働政策においても十分な対応がなされているとはいいがたい健康や働きやすさといったディーセント・ワークに関する課題を考える上で非常に多くの示唆に富むものである。・・・」
・『日本労働社会学会年報』第34号(2023年)書評掲載
「現在の女性労働のあり方を考える示唆を得られる一冊であり、一読することをお勧めしたい。」
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